
トラブルに対応できない、ぎりのぎりの生活が招いた住宅ローン破綻【滋賀県大津市/48歳・男性】
相談者 | 瀬田茂さん(仮名)・48歳 |
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所在地 | 滋賀県大津市 |
職業 | 工場勤務 |
家族 | 妻と子(小学3年)の3人家族 |
残債務 | 2,200万円 |
住宅ローン債権者 | 住宅金融支援機構(エムユーフロンティア債権回収) |
ご相談の時期
瀬田さんが当社へ相談に来られたのは、まだ滞納前の段階でした。クレジットでの買物や消費者金融からお金を借りて住宅ローンを返済している状況でした。
ご相談内容
瀬田さんは15年前に新築マンションを3500万円で購入しました。毎月の返済額13万円、当時の年収は400万円程、返済比率が高かったものの、奥様の収入を合算することで住宅ローンを組むことができました。マンションは駅から近く、資産価値が高いと判断し思い切って購入を決意したそうです。
しかしながら、住宅ローン、管理費、固定資産税といった居住費の収入に占める割合が非常に大きく、瀬田さん夫婦にとってかなりの負担となっていました。それでも生活を切り詰めながらなんとか頑張って支払いを続けていました。
ところが一昨年前、生活状況が一変する出来事が起こってしまいました。それは突然の収入減少です。というのも、瀬田さんの会社が品質問題で不祥事を起こし、その影響で工場の製造ラインが突然ストップしてしまったのです。
これまでの生活費を抑える努力だけでは返済が追い付かず、次第にクレジットカードに頼る生活に代わっていきました。収入状況は半年たっても一向に元に戻らず、ついには消費者金融からもお金を借りざるを得ない状況に陥ってしまったのです。最終的に住宅ローン以外の借金は250万円にまで膨らみ、毎月のカードの使用頻度もどんどん多くなっていきました。
このまま状況が改善されなければ大変なことになると思った瀬田さん夫婦は当社のホームページを見て相談に来られました。
ご相談者の希望
-
借金から解放され、元の生活レベルに戻したい
- マンションを売却して居住費を軽減させたい
解決に至るまで
瀬田さん夫妻の世帯収入は月額31万円程、そして支出がなんと44.5万円、10万円以上もの赤字が毎月続いている状況でした。そして、マイナス支出の中で大きな割合を占めていたのが住宅ローンなどの居住費です。カードや消費者金融への借金も去ることながら、居住費の改善が必要と考えられました。収入が元に戻ったとしても、依然切り詰めた生活が続くライフスタイルでは、老後の預金どころか突然の出費にも対応できません。
よって、自宅については居住費を抑える為に売却し、残る借金については自己破産することを当社から提案しました。瀬田さんは自己破産することに抵抗を感じていましたが、生活再建することが目的であることを客観的に考えていただき、結果、当社の提案で解決を目指すことになりました。
【相談時の資産状況】
プラスの財産 | マイナスの財産 | ||
預金 | 0円 | 住宅ローン | 2,200万円 |
車のローン | 120万円 | ||
消費者金融 | 130万円 | ||
合計 | 0円 | 合計 | 2,460万円 |
【相談時の収入と支出状況】
収入 | 支出 | ||
夫 |
20万円 |
居住費(ローン、管理費、 |
16万円 |
妻 | 11万円 | 食費(食費) | 5万円 |
光熱費(電気・ガス) | 1.5万円 | ||
通信費 | 1.5万円 | ||
教育費 | 1.5万円 | ||
車両費(カーローン、 保険、燃料、駐車場) |
5万円 | ||
生命保険 | 2万円 | ||
雑費 | 3万円 | ||
クレジット返済 | 6万円 | ||
消費者金融(1社) | 3万円 | ||
合計 | 31万円 | 合計 | 44.5万円 |
まず、自宅マンションの売却について、住宅ローンの残債務2,200万円、そしてその資産価値は1,700万円から1,800万円程で、オーバーローン状態にありました。売却するには任意売却しかありませんので、依頼後、滞納を開始。合わせて消費者金融やクレジットへの返済もストップしてもらい、当社司法書士から各債権者に受任通知を発送しました。これですべての請求が止まり、当社が窓口となって手続きを進めることになりました。
手順は任意売却した後に裁判所へ自己破産の申立てをする流れになります。時間的には滞納開始から8ケ月後に任意売却を完了させ、それから破産手続きを半年かけ全てを終了させるというスケジュールです。(相談から1年2ケ月で終了)
任意売却に8ケ月かかる理由は、住宅ローンを滞納していない状況で任意売却する為に、銀行の手続き上、6ケ月滞納という規制事実をまずはつくらなければならないからです。
滞納(6ケ月滞納)→期限の利益喪失・代位弁済→任意売却販売活動という流れになります。
(参考:フローチャート「住宅ローン滞納~競売」)
この6ケ月の間、瀬田さんには次の住まいの為の生活準備金を貯めて頂くことに専念していただき、販売活動ができるまで待ってもらいました。
それから6ケ月後、ようやく銀行での手続きが終了し、任意売却活動を開始しました。活動から1ケ月後、1750万円で購入したいという方が現れ、債権者もそれに応じ、無事、契約・決済を行うことができました。そして引越しも完了し、瀬田さんご家族は新転地での生活がスタートしました。
スケジュール通り任意売却が行えたのは、駅から非常に近いという立地条件にあったことと、任意売却での交渉相手が住宅金融支援機構の1行だけだったことがスムーズな流れをつくりました。
そして、次は破産手続きです。任意売却によって残った住宅ローン債務は約500万円、そしてその他の借金250万円。これらの債務が免責されることを目指して裁判所に破産の申し立てを行いました。こちらについても特に大きな問題はなく、手続き開始から半年後、免責許可決定の判決がくだされました。これで全てが終了です。
これまで居住費が16万円で収入に対する割合が50%以上になっていましたが、今回の解決によりその割合は25%以下にまで下げることができました。また、収入の方も相談時よりも若干上がったことにより生活の方もゆとりを持てるようにもなりました。
しかしながら、会社の不祥事による収入減少が瀬田さん家族の破綻要因と思われるかもしれませんが、それは少し違います。そもそも、そういった経済的トラブルにも対応できない状況で住宅ローンを組んでしまったことが大きな問題であると私は思います。30年、35年と長期のローンを組むということは、必ず経済的トラブルが起こるというリスクを加味しておかなければなりません。そういったリスクに目を背け、高額な不動産を購入することはとても危険なのです。収入に見合った無理のない返済計画を客観的に考え住宅ローンを組むことがいかに重要であるかを考えさせられた事例ではなかったでしょうか。