任意売却とは
任意売却とは、強制的に売却されてしまう「競売」を避けるために、銀行など債権者と調整・交渉を図り、和解によって不動産を売却する方法です。
住宅ローンを組む際、銀行は必ずその不動産に抵当権をつけます。この抵当権の付いた不動産を売却するには、必ず抵当権を抹消しなければならず、その為には、銀行から借りているローン残金全てを一括で返さなければなりません。しかし、不動産時価よりも住宅ローン残債務の方が多く(オーバーローン状態)、売却したくても売却できない場合がります。また、経済的理由などから毎月の住宅ローンの返済ができない事態も重なれば、どうすることも出来ません。
そこで、任意売却という方法で、私達が債権者やその他の利害関係人と話し合い・調整を行い、住宅ローンが残る状態でも不動産の売却を可能にさせます。
任意売却はあくまで債権者との和解によって導かれる解決方法です。
なぜ、任意売却はローンを全額返済出来なくても売却できるのか?
一定期間、住宅ローンの返済が滞れば、債権者は不動産を競売にかけ、金銭の回収を図ります。しかし、債権者にとって競売は強制的に売却できるメリットはあるものの、決して満足できる金銭回収方法でもないのです。
というのも、競売は不動産会社の仕入れの場として活用されており、相場価格の6割から7割程度でしか取引されません。よってたくさんの未回収分が残ってしまうことが多々あるのです。また、高額な競売申立て費用、半年から1年もの時間を費やされることもあり、実は、競売は債権者にとってあまり得策的な売却手段ではないのです。
一方、和解による任意売却は、競売市場のような不動産会社の仕入れの場ではなく、一般市場で取引が行われるため、債権者にとって競売よりも多くの金銭を回収できる期待がもてます。
このことから、債権者は全額返済されない場合でも、任意売却ならば売却を認めるという考え方をするのです。
しかしながら、任意売却のメリットは銀行だけではありません。
債務者にとってもたくさんのメリットがあります。
あなたにとって「任意売却」のメリットとは
任意売却は債権者にとってより多くの金銭回収を図れる売却方法になるわけですが、これは債務者の売却後に残る借金が最小限に済むということでもあります。また、引越費用の捻出、そのまま住み続けることができるなど、債務者に多くのメリットを見出してくれるのが任意売却です。
その他にも、さまざまなメリットがあります。
1. 住宅ローンの借金を最小限に減らすことができる。
競売市場は不動産会社の仕入れの場として多く活用されています。一般個人の方でも入札に参加しやすいよう法整備されつつあるものの、瑕疵担保責任問題、退去問題、資金調達などまだまだ一般個人の方では対応しきれないの問題が実情としてあります。結果、競売に参加するのはどうしても不動産会社になってしまい、一般市場相場と比べ6割から7割程度で取引されます。
それに対して任意売却は一般市場相場で取引される為、債務者の借金は最小限に済むかたちで売却できるようになります。
2. プライバシーを守ることができる
債権者によって競売の申し立てがなされると、競売になってしまったことが裁判所で公開(配当要求公告)され、名前や住所といった個人情報が公になってしまいます。
それによって、不動産会社や貸金業者などが自宅に訪れたりするなど生活環境に変化を感じるようになります。
そして競売終期段階になると、裁判所は入札参加者を募る目的で、3点セットと呼ばれる資料を一般公開し、誰でも閲覧できるインターネット(BIT不動産競売情報サイト)にも掲載されるようになります。
さらに入札間際になれば、競売に参加しようとする不動産会社が現地調査をおこなったり、近隣住民への聞取り、チラシによる販売活動なども行われ、競売になってしまったことがどうしても近隣に知れ渡ってしまいます。
競売の申立てがされる前に任意売却ができれば、競売による情報拡散を防ぎ、プライバシーを守るかたち解決することができます。
3. 売却後の残債務は生活状況に応じて返済計画が見直しされる
任意売却される方の多くは、任意売却が終わっても、依然住宅ローンがたくさん残った状態にあります。
任意売却をしたからといって、この借金が帳消しになることはなく、依然、債権者から請求を受けることになります。
ただ、任意売却をした理由は、あなたの経済状況が非常に厳しかったが故のことですから、債権者は「これまで通りの返済額を毎月支払いなさい」とは言いません。
債権者もそれを承知のうえ、その後の返済計画の相談に応じてくれます。
返済計画見直しの際、債権者より提出が求められるのがあなたの収入と支出がわかる資料です。
(住宅金融支援機構は「生活状況報告書」と言います)
その資料に基づき、毎月の返済額が決定されます。
同じ残債務をもつ人がいても、Aさんは2万円/月、Bさんは1万円/月、そしてCさんは5,000円/円というように、残債務の多少で返済額が決定されるのではなく、あなたの家族状況、収入状況を考慮し、債権者主導ではなく返済額が決まります。
4. 今の自宅にそのまま住み続けることもできる
リースバックとは
任意売却にはそのまま住み続けるというかたちで不動産を売却する方法があります。
これをリースバックと言います。
このリースバックは不動産を購入してくれる協力者(家族・知人・投資家など)の存在が必要になりますが、その協力者に家賃を支払うことで、これまで通り生活環境を変えることなく住み続けることができます。また、自宅だけでなく事業をされている場合、事業を継続する為にはどうしてもその場所から離れることができない場合もあります。そんな場合もリースバックを活用することできます。さらに、将来、買い戻して、所有権を元に戻したい場合、「買戻し特約」も付けることができます。
このような方がリースバックをします
- 子供の生活環境を変えられない
- 一緒に住む両親に負担をかけられない
- 店舗や事務所として利用している為、引っ越しすることができない
- 思い入れのある自宅からどうしても離れられることができない
- 将来的に買い戻しをしたいと考えている
リースバックのメリット
- 固定資産税やマンション管理費などの負担が無くなる
- 引越費用や賃貸契約にかかる費用(敷金や礼金、保証金など)が発生しない
- 一般的な相場賃料よりも安く住み続けることができる場合が多い
- 将来的に買い戻すことも可能
- 家賃が支払えなくなっても、住宅ローンのように縛られる契約ではない
- 任意売却手続きを早く済ませることができる
リースバックの家賃の決め方と注意点
リースバックはあなたと協力者との間で賃貸借契約を締結することになりますが、その際発生する家賃の額は、一般的に利回り計算によって決定されます。
利回りとは、投資家が投資する金額に対してどれだけの利益があるのかを数値化したもので、任意売却によるリースバックの利回りは一般的に8%~10%が年間利益として計算されます。
例えば、投資家が1,000万円の投資を行う場合のリースバックについて説明します。
このように、投資家が1,000万円の投資をすると、毎月67,000円が発生するということになります。
投資金額が低ければ、その分、家賃も安くなるということでもあります。
しかしながら、この投資金額は最終的に債権者の応諾が必要になるため、あなたと投資家だけでリースバックが成立するものではないことも知っておいてください。
また、リースバックを行う際、一番大切なことは、家賃があなたにとって妥当な金額になっているかどうかです。
当社に来られるご相談者の35%がリースバックをご希望されるのですが、その中には住宅ローン以上の家賃となってもリースバックを強く望まれる方もおられます。
ご自宅を離れることが出来ない事情もありますが、住み続けることで家賃が負担となり生活再建どころではないというのでは本末転倒です。
生活再建という目的の中にある任意売却において、リースバックが本当に相応しい解決方法なのかを、客観的に考えることも大切です。
5. 引越費用やその他の必要経費を捻出することができる
任意売却における一番ポピュラーなメリットとしてあげられるのが引越費用です。
ご相談者の中には、自ら引越費用を捻出することが困難な方もいます。その為、債権者はその点を考慮し、売却価格の中に引越費用を必要経費として含めてくれることが多くあります。
また、売却に際し、登記費用、当社への報酬、滞納している税金やマンション管理費なども諸費用として売却価格の中に含めることができます。
任意売却は通常の不動産売却とは異なり、売却に必要な費用を自ら別途用意する必要はありません。
任意売却をすれば自動的に債権者から引越費用を貰えるという訳ではありません。あくまで債権者の判断に委ねられ、あなたの収入状況や預金状況などから決定されます。
では、相場的にどれだけの引越費用を貰えるのかというと、一般的に10万円から30万円といったところです。
中には50万円の引越費用を認めてくれた債権者も過去にありましたがそれは非常に稀です。
いずれにしても、100万円とか200万円の引越費用を任意売却で捻出させることは不可能であるということを知っておいてください。
前述、任意売却では100万円とか200万円もの引越費用を捻出させることは不可能だと言いました。
しかし、営業マンから「任意売却を当社に依頼してくれれば、引越費用100万円渡します」と言われたらどうでしょうか。経済的に厳しい状況でそんな高額なお金を提示されたら、疑いよりもその望みにかけてみようと思う場合もあるかもしれません。
そんな心理状況をついた、詐欺まがいの不動産会社があるのも事実。
しかし、任意売却では、何百万円もの引越費用を捻出させることは不可能であることを知っておいてください。
高額な引越費用を提示する営業マンが近寄ってきた場合は、相手にしないようにしましょう。

大抵、債権者は引越費用を認めてくれるものですが、中には全く認めてくれないケースもあります。特に住宅金融支援機構では年々厳しくなってきており、生活保護や自己破産をしない限り一切、引越費用を認めないと頑なに拒む担当者もいたりします。
そんな最悪の場合に備えて、やはり預金をしておくことも大切です。
しかし、どうしても預金もできず、引越費用を確保することができない場合もあります。
そんな場合はどうしたらいいのか。
- 買主さんに残存不要物を含めて引き渡す
- 買主さんに必要最低限の引越費用を負担してもらう
- 役所あるいは社会福祉協議会に相談すればお金を貸してくれることがある
任意売却実務において、引越費用が全く捻出できないというのは非常に稀なケースです。しかし、ないならないで最終的に何頭の対応を図ることが出来るものです。
任意売却にはデメリットはないのか
競売と比較した場合の任意売却のデメリット
任意売却は経済的事情を抱えた方を対象とした売却方法となる為、常に競売との比較になります。
任意売却を競売と比較した場合、デメリットはないといっても過言ではありません。しかし、強いて挙げるなら任意売却活動を行う上で必要な内覧の協力、そして購入希望者が決まれば契約や決済に足を運んでもらうという協力がデメリットになるのかもしれません。
通常売却と比較した場合の任意売却のデメリット
- 任意売却は必ず成功するものではなく、成功できなければ競売になってしまう
- 個人信用情報に事故履歴有りとして分類され、今後金融機関などからお金を借りることが難しくなることがある
- 借金が残る状態での売却となるため、任意売却が終わっても支払いは継続する
- 信頼できる任意売却業専門会社を探し出すことが難しい
任意売却は経済的な事情を抱えている方を対象とした売却方法です。そのため通常売却か任意売却のどちらにするかを悩むというのは少し違和感がありますが、経済的理由ではなく離婚をしてどうしても売却せざるを得ないケースもあります。その場合は上記で示した任意売却のデメリットについて十分に理解したうえ任意売却の決断をする必要性があります。
任意売却の成功率

任意売却は通常売却とは異なり時間制限のある売却活動になります。そのため競売の申し立てがなされ、入札まで残り僅かな時間しかないような状況では、やはり任意売却の成功率は低くなります。それに対して、まだ競売の申立てがされていないような状況で任意売却を行えば、きわめて高い確率で任意売却に成功します。
任意売却成功のカギを握るタイミングは、債権者が裁判所に競売を申し立てする「前」か「後」かによってその成功率は大きく変わります。
競売申立て「前」の任意売却 成功率91%
任意売却を決断するうえで大きなターニングポイントになるのが競売の申し立ての「前」か「後」。その目安となるのが債権者の行う「代位弁済」です。
「代位弁済」が行われてしまうと、後は事務的に競売手続きへと進んでいきます。しかし、競売の申立てがなされるまでに任意売却をする意向を債権者に示せば、競売の申立てを待ってくれるのです。
競売の申立てがなされない中での任意売却活動は、競売よりも時間的制約が緩くなりますし、債権者も臨機応変な対応をとってくれることも多い為、任意売却の成功率は極めて高くなります。
当社の統計ではご相談者の91%の方が任意売却に成功されています。
競売申立て「後」の任意売却 成功率68%
競売の申立てがなされてしまうと、最短3ケ月という時間的制約を受けます。ですので、競売「前」の任意売却よりもどうしても成功率は下がってしまいます。
しかし、それでも半分以上の方が任意売却に成功していますので、決して諦めてはいけません。ただし、任意売却は競売の入札開始・開札までに完了させておかなければならず、それを過ぎてしまうと任意売却は出来なくなってしまいます。裁判所から「競売開始決定通知」が届いたら、早急に私達のような専門家に相談するようにしてください。